Vol.7

減速比とトルクの関係とは?具体例で計算方法も解説

減速機の仕組み

減速機は、歯車などが回転することによりモータなど動力源の回転数を減速させます。回転数を減速させることで、得られるトルクが大きくなる仕組みです。

そんな減速比と出力トルク1*の関係や原理、計算方法を具体例を交えながら解説します!

減速比とトルクの関係とは?

減速比と出力トルクの関係は、機械工学や機械設計において重要な概念です。
減速比は、入力軸(モータシャフト等)と出力軸(通常は負荷が掛かる側)の回転速度の比率を示し、出力トルクに影響を与えます。
関係は下記の通りです。


 出力トルク = 入力トルク × 1/減速比 x 伝達効率 

減速比を高くすると、出力軸の回転速度は入力軸より大幅に低くなりますが、出力トルクは増加します。
例えば、変速機がある自転車の場合、発進時には大きなトルクが必要なので減速比を大きくし、高速運転時には減速比を小さくさせます。

”減速比”で必要なトルクを調整しています。

モータの回転数を減速できる理由

減速機には異なるサイズや歯数の歯車が組み合わさっており、これにより回転数を減少させる効果が得られます。
簡単な歯車の組み合わせ(入力側に半径rの歯車A、出力側に半径2rの歯車Bがある場合)で説明します。

入力側歯車Aが一回転しても、歯車Bは半分しか回りません。(1/2に減速させることになります)
このように、減速機は歯車の歯数やサイズを工夫して設計し、入力回転数を出力回転数に比べて減少させる仕組みになっています。

なぜ減速するとトルクアップできる?

物理学の基本原則に基づいて説明できます。
上記イラストの歯車組み合わせで説明します。
歯車Aからの力をF(N)とした場合

 F(N)=入力トルク T(N・m) ÷ 歯車Aの作用半径 r(m) = T/r(N)  (※歯面に掛かるトルク)となります。

歯車B部に発生する回転トルクは、

 T’(N・m)=歯面に掛かるトルクに掛かる力 T/r(N) × 歯車Bの作用半径 2r = 2T(N・m) となります。

よって、出力側歯車のピッチ円直径が2倍(減速比1/2)になるとトルクが2倍になります。

出力トルクと回転数の計算方法

出力トルクと回転数の計算方法を、具体例で説明します。

出力トルクの計算方法

減速機の出力トルクの計算は、”入力トルク”と”減速比”と”伝達効率”を使用します。
以下に、出力トルクの計算方法を具体例を交えて説明します。

出力トルク  を計算する一般的な式は下記の通りです。
 出力トルク = 入力トルク × 1/減速比 x 伝達効率 

例)減速機の入力トルクが 10 N・m、減速比が 1/5、伝達効率が90%の場合

これらを計算式に代入すると、

 出力トルク = 入力トルク × 1/減速比 x 伝達効率
       = 10 N・m × 5 x 90%
       = 45 N・m


したがって、この条件での減速機の出力トルクは 45 N・mです。

出力回転数の計算方法

減速機の出力回転数を計算するためには、減速比と入力回転数を考慮する必要があります。
出力回転数 を計算する一般的な式は下記の通りです。
 出力回転数 = 入力回転数 × 減速比

例)減速機の入力回転数 : 1800 rpm、 減速比:1/3 の場合

これらを計算式に入力すると、

 出力回転数 = 入力回転数 × 減速比
        = 1800 rpm × 1/3
        = 600rpm
したがって、この減速機の出力回転数は 600 rpmとなります。
減速比を知っていれば、入力回転数から出力回転数を簡単に計算できます。

減速機は必要?減速機がある場合とない場合の出力トルクの違い

モータに減速機が「ついている場合」と「ついていない場合」の出力トルクには大きな違いがあります。

1.減速機がついている場合:
   ・減速機は、モータの高速な回転を低速な回転に変換し、同時に出力トルクを増加できる
   ・低速高トルクの出力を実現し、多くの工業用アプリケーションに適用することができる
   ・減速機を介してモータを使用することで、モータの効率が向上し、負荷を効果的に操作できる

2.減速機がついていない場合:
   モーターの出力トルクをそのまま使うため、重い負荷に対して十分なトルクを提供するためには、大容量のモーターが必要
 
減速機は、機械やシステムの特定の要件に合わせて設計され、モーターからの出力トルクと回転速度を最適に調整します。
そのため、アプリケーションに応じて”適切なモーター”と”減速機の組み合わせ”を選択することが重要です。

高トルクも寿命も両立させる樹脂減速機

スターライトの樹脂減速機は、”寿命(耐久性)を考慮しつつ、できるだけ高トルクに対応できる材料選定と減速機設計”を行うことができます。
お客様の使用環境、使用条件に合わせた樹脂減速機を提案できるのが弊社の強みです。

高いトルクへの対応は高強度の樹脂を用いることで対応できますが、強度プラスチックだから”耐久性”も長くなるわけではありません。
樹脂歯車は使っていると少しづつ摩耗していきます。強度を増すために配合する硬い添加材が歯面の摩耗を促進させ、耐久性を短くする場合があるためです。


寿命(耐久性)と高トルクを両立したい方は、お気軽にお問い合わせください。

1*出力トルクとは、モータの回転数が減速機によって減速されたのちに、得られるトルクのこと

  • 平川 浩司

    スターライト工業株式会社 SBR開発営業部 部長

    平川 
    浩司

    入社からエンジニアとしてエスベアの材料開発に約5年従事し、射出成形技能士の資格も取得。その後営業に転身し、材料、成形、技術を分かる営業パーソンとしてエスベアの拡販で20年以上の実績を重ねて現在に至る。

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